共同研究│2024同志社大学政策学部 三好ゼミ

ゼミ生で議論し、問題意識を共有できる数個の政策問題を選定します。そして、研究グループを形成し、共同研究論文を執筆します。論文は、3年生の秋に完成させ、ISFJ日本政策学生会議で発表していただきます。このゼミは発足して6年目ですが、卒業生や上級生は、これまで、次のような研究に取り組んできました。

生活道路におけるこどもの交通事故削減-ICTの活用-(2023年度)

担当:松田晏青(班長)、森田若奈、梶井千皓、松本翔汰(理工学部)

本稿は、生活道路での子供を巻きこんだ交通事故を防ぐことを目的に、歩行者の持つデバイスと車が協調して事故を回避する情報通信システムの導入を提案したものである。論文では、負の二項回帰モデルを用いた交通事故発生状況の分析、具体的な歩車協調システムの提案、当該システム導入の費用と便益の算出、導入にあたっての自治体の役割等、包括的且つ詳細な分析を行っている。また、この論文では、文理融合で研究を行うことが重要と判断し、理工学部の佐藤健哉教授の研究室から4年生1名の参加を得て、政策学部三好ゼミ生3名とチームを形成して論文執筆が行われた。現在は、技術が社会を大きく変化させている時代である。文理融合は、研究者の間で重要性が叫ばれているが、この研究は、学部生時代から、文理融合を開始する意義を示唆する取り組みといえる。
 

日本人のチャレンジ精神を高めるための政策提言-世代間連鎖からの脱却ー(2023年度)

担当:金田祐紀(班長)井上涼介、木田歩花、砂川大貴、西森舞

本稿は、日本人のチャレンジ精神が低い原因が、チャレンジ精神よりも調整力が重視された親世代の成功体験が後続世代にも伝搬し、後続世代がそこから脱却できていないことが原因であるとの問題意識に基づく研究である。論文では、チャレンジ精神が親から子へ世代間伝達してるかどうかを「世界価値観調査」の世界クロスセクションデータを用いて分析するとともに、チャレンジ精神を向上させるために必要な要素を明らかにすべく、起業家にヒアリング調査を行っている。そのうえで、親世代と子どもが一緒にチャレンジ精神を高めることができる新たな教育事業『親子で学ぶイノベーション教室』を提言している。

 

文系のDX人材育成シナリオ (2023年度)

担当:寺島幸希(班長)、大林千紘、松並沙英安福まい

文系には、顧客に向かい合い、ビジネス全体を俯瞰し創造性や思考力を元に考える能力が求められるが、本稿は、こうした人材がデジタル技術を駆使して生み出す知見は、専門性が高い理系とは異なる社会的意義を持つ という認識から、文系DX人材強化の方策を検討している。独自のアンケート調査の結果を順序ロジットモデルやトービットモデルを用いて分析するとともに、大学入試センターへのヒアリング等を行い、「大学入試において大学入学共通テスト数学①を必須化する」こと、大学入学後の「データサイエンスリテラシーレベル履修の必須化」を提言している。
 

女性の指導的地位の登用におけるクォータ制度の適用について(2022年度)

担当:武田千穂(班長)梶井千皓 佐藤環 髙橋佳乃 豊田光

優秀な女性の活躍を阻む要因の一つとして男性上司と女性社員との間の情報の非対称性に着目し、アンケート調査を通じて、その非対称の程度を男性上司と男性社員の場合と比較している。そして、その分析結果を踏まえた上で、上司と女性部下との間の情報の非対称性を縮小し、また、女性活躍のロールモデルを多数作りだすためには、クォータ制度による女性の管理職への登用が必要としている。
 

高等学校におけるキャリア教育改革~若者の社会的・職業的自立の促進を目指して~(2022年度)

担当:安倍瑞喜(班長)木村麟太郎 寺坂裕世

中等教育時に経験したキャリア教育及びその他経験と大学生時点における将来への見通しの有無との関係性や、キャリア教育と仕事の満足度との関係性等について分析を行い、中等教育における早期キャリア教育の必要性を明らかにしている。そして、若者が様々な進路や職業について知り、考え、納得した上で自身のキャリアを選択していくことのできる新しいキャリア教育の仕組み、高大産連携キャリア教育システム「 針館(らしんかん)」を提言している。
 

林業活性化と脱プラ化~プラスチックへの目的税課税~(2022年度)

担当:小林春花(班長)酒井良晴 手嶋洋信 高橋佳乃

放置林の減少のために最も効果的な方策である木材需要の創出、そして脱プラ化のためのプラスチック製品生産量の削減という2つの目的を同時に達成するための方策として「プラスチック製品への目的税の課税による、紙製品への代替促進」を政策として提案し、その効果を定量的に分析している。
 

大学入学時における数学能力資格試験の導入(2022年度)

担当:安藤睦乃(班長)大豆生田友香 藤浪皓也

日本の学生の数学力が、義務教育までは国際的にも高水準にあるにもかかわらず、大学生段階では低下が見られるとし、その原因として、大学入試において数学を課せられていない学生が多く存在することに着目している。そして、各大学の入試の個性を活かしつつ学生の数学力を向上させるための方策として、大学入学時における数学能力資格試験の導入を提案している。
 

アフターコロナにおける人々の居住地選択(2021年度)

担当:内藤航太(班長) 金谷奈実 高田遼太郎 河 現琇 濱本夏未

東京への人口の転出入が 2019年から 2020年にかけてどのように変化したのかを分析した上で、コロナ禍で起きた変化を東京一極集中の是正に結びつけるべく、テレワークの促進方策を提案している。
 

日本の農業生産性向上に向けて(2021年度)

担当:三好世真(班長)金田百寧 久保田優介 佐藤環

農業の生産性の国際比較を行った上で、日本の農業の生産性を向上させるべく「リモート農業〜 E3A〜」と、若者のための農業教育として「大学での附属農場活用による農学部と経営学部との連携教育」を提案している。
 

政治力の世代間格差の是正:新しい投票制度の多面的評価(2021年度)

担当:松井玄(班長)桐戸夏葵 永谷沙耶 松田佳子

若者の政治力を向上させるという観点から、新しい投票制度として「ドメイン投票」、「重みづけ投票」を取り挙げ、その効果を思考実験したものである。
 

無人自動運転による物流システムの再構築(2021年度)

担当:堤章太郎 (班長)植草周平 小野萌子 加藤里歩 黒岩佑介 辻元宏明

物流への無人自動運転車両の導入効果をドライバー不足解消効果、交通事故削減効果、 CO2排出量削減効果から検討したうえで、高速道路内を走行する輸送トラックをレベル4自動運転車へ転換し、その運用管理を一つの組織に一元化することを提案している。
 

社会的流動性を促進する教育事業の提案(2020年度)

担当:高田希(班長) 臼井愛海 工藤優希 小林明加音 杉山詩奈

近年、日本では「格差社会」が問題視されている。日本社会は1980年代以降、様々な社会経済変化に伴い格差が広がっている。このような格差の広がりは社会的流動性の停滞をもたらし、 多くの才能ある人材の開花が失われ、潜在的な経済成長が損なわれることにつながる。この論文では、独自のアンケート調査結果を用いて、3世代にわたる長期的な社会的流動性の実態について分析を行うと共に、小学生時の学習意欲と将来の経済的生活水準との関係、小学生時の周囲の環境と学習意欲との関係を、ロジスティック回帰モデルを使って分析した。そして、その分析結果を踏まえ、 新たな放課後の教育事業『ときめき きらめき 教室』の設置を提案、経済的に恵まれない家庭の子どもに能力を引き出す機会を設け、結果として社会的流動性を促進させていくことを提案してている。
 

地域特性が非侵入窃盗に与える影響分析(2020年度)

担当:香月亮人 久物舞衣子 黒部真衣 田口史織(班長) 西村賢人 平田有香

近年の日本の一般刑法犯は、認知件数、検挙件数ともに減少傾向が続いている。犯罪に関する統計のみに着目すると、数字の上では日本の治安は改善されていると考えられる。しかし、内閣府「治安に関する世論調査」(2017)によると、調査対象者の半数以上が日本の治安悪化を感じている結果となっている。これらを考慮すると、一般市民が心から安心できる安全な町に向けた地域環境の整備が急務であると考えられる。この研究では、非侵入窃盗に焦点をあて、その発生率を低下させる地域コミュニティの機能を、1)監視機能、2)抑止機能、3)識別機能の3つの機能に分類したうえで、都道府県パネルデータを用いて、犯罪発生率と各種指標との関連性を分析している。そして、3)識別機能としてのソーシャルキャピタルを形成するうえで商店街の役割が重要との認識から、商店街活性化に向けた政策を提言している。

 

完全自動運転車の普及と都市政策(2020年度)

担当:道上和也(班長) 梅田龍馬 小野萌子 加藤里歩

完全自動運転が実現すると、機会費用としても交通の時間価値(移動時間が削減されることに対する支払意思額)は大きく減少する可能性が高い。なぜなら、ドライバーが運転から解放され、車内で仕事をすることさえ可能になるからだ。一方で、この効果は、人々の居住地を郊外へと移動させ都市の外延を引き起こす可能性がある。この場合、財政面、環境面で社会にネガティブな影響を与えることになろう。この研究では、独自のアンケート調査を実施し、その結果をロジスティック回帰分析を用いて分析することを通じて、交通の時間価値がどの程度低下するかを実証的に分析した。さらに、自動車の完全自動運転化によって都市中心部に駐車場が必要なくなった場合に、どの程度の面積の土地が他の用途に転用可能になるのかを推計した。

 

Society 5.0における生産組織の提案(2019年度)

担当:柴橋和樹 (班長) 神農菜々美 黒川雄平 齋藤大晃

Society 5.0では、 AIIoTといった人やモノを繋ぐ技術が更に発展することが見込まれる。この社会では、より多くのデータを集約すればする程、データの利用価値が上昇するという特徴があり、その果実を得るためには、個社の壁を超えた新しい生産組織の構築が不可欠である。この研究では、企業のデータ共有を阻んでいる要因として、 1)データ共有による企業の競争力低下への懸念、 2)データ共有の際のデータの整合性がとれていない点、 3)データセキュリティ対策の課題、 4)データ共有後のデータ活用の不透明さ、の 4つを挙げ、それらの課題に対する対応策を検討した。
 

農業生産性の国際比較:この先の日本の農業に必要なものは何か(2019年度)

担当:琢明祥(班長) 阿賀大輔 中務元貴 青木滋音 徐承彬

DEA/Malmquist生産性分析を用いて、日本と他のOECD諸国との間の農業の生産性の比較し、日本の農業の生産性の伸びが低いという状況を量的に示した。そして、この分析結果を踏まえ、日本農業の持続的発展のためには、1) ICTなどの先進技術の活用、2)労働力の強化を目指した農業経営の法人化、の2点を積極的に行っていくべきとの政策提言を行った。
 

交通事故のさらなる削減を目指して:人と車のコネクト(2019年度)

担当:高橋美香(班長) 岡田美奈 亀岡穂乃香 森川真衣 名古路彩月

地域の人同士のつきあい・交流の程度が、交通事故の低減に寄与するのではないかという仮説の下、交通事故発生率とソーシャル・キャピタル指数の関係性を分析し、ソーシャル・キャピタル構成指数の 1つである「つきあい・交流指数」が高いほど、自動車対自転車の交通事故の発生率が低くなるという関係性を実証した。そして、この結果を踏まえ、1)運転者講習会において、参加者同士の交流を活発化するためのフィールドワークやグループワークの導入、2)60歳以上の高齢者と 1619歳を中心とした若者を対象とした特別な自転車講習会の開催、の2点を提案した。
 

技術の家庭内浸透と家族の共有時間(2019年度)

担当:水谷繭子 (班長) 工藤杏樹 村田百依香

従来の日本では、標準世帯をベースにした制度設計・政策立案が行われてきた。しかしながら、家庭が担ってきた機能のアウトソーシングや機械化が進み、家族の形態や社会における役割は大きく変化してきている。現在では、標準世帯は全世帯の5%にも満たない。そして、Society5.0の時代には、自動運転をはじめとするAI関連機器が、家族の形態や機能に、これまでとは次元の異なる影響を与える可能性もある。この研究は、こうした問題意識に立脚し、1)技術の家庭内浸透が、これまで、家族の時間共有にどういう影響を与えてきたのかを各種統計資料を利用して分析すると共に、2)自動運転、ドローンいったSociety5.0の技術が、家族の時間共有に、今後どういう影響を与えるのかを、定性的に考察した。そして、その考察結果に基づき、よりバリエーションに富む生活共同体を視野に入れ、現在の家族を前提とした諸制度を見直していくべきと提言した。
 

商店街空き店舗率の決定要因分析(2018年度)

担当:三谷有里奈 (班長) 奥田有紗 岡本桂侍 藤井祥 野村奈未

商店街は古くから地域コミュニティの場として機能し、地域社会に大きな役割を果たしてきた。しかし、現在ではシャッター街と呼ばれる空き店舗ばかりの商店街が増加し、商店街自体が地域コミュニティの場としての機能を失いつつある。そこで、商店街の空き店舗の増加につながる要因を重回帰分析により明らかにした。そして、その分析結果に基づき、シャッター街の増加を防ぐためには、商店街内の生鮮食料品店の保護・支援を積極的に行うことが重要との政策提言を行った。
 

自動運転車による日本の通勤改革(2018年度)

担当:和田葵(班長) 小崎薫 春増由伽 長谷川琴美 辻海帆 藤本瑠依 堀川千晴 真鍋雄弥

レベル5の自動運転の実現は技術的に難しいと言われているが、もしこれが実現できた場合、自動車の運転はすべて人工知能が行い、人間は、自動車の運転から解放されることになる。車の形もかなり変化し、オフィス空間に近い車も登場するかもしれない。そうなれば、車の中で仕事をすることが可能になり、通勤時間は勤務時間へと変換され、個人の自由時間は大幅に増加する可能性がある。この研究では、総務省「社会生活基本調査」のオーダーメイド集計結果を用いて、自動運転によって勤務時間に変換可能な通勤時間(機会費用)を推計した。